虚脱そして脱力
2007年 11月 03日

ここポルトガルでの放映も、夏に帰省していた日本でもWOWOWで一挙放映されていたのも結局満足に見ることができないまま、「いづれDVDが出たらじっくり見ればいいや」と思っていたHBOの「ROME」のシーズン2。
やっと数日前に入手。
去年シーズン1のDVDを見てから既にもう一年。
そして、先ほど仕事を放ったらかしの状態で、ついに全てを見終わりました。
カバーが、シーズン1のはローマの石畳にたたずむ兵士とその剣から滴るどす黒い血だったのが、シーズン2は白をベースにしたやはりローマの背景にたたずむ女と、彼女が手にした剣から滴る血。
このカバーデザイン見た時「何だか柔いな」と思ったんですけど、全てを見終わった今、ここに潜められているであろうシーズン2のコンセプトに納得。

1はカエサルを中心に内戦期から激動のローマの政治的展開、そしてそれにシンクロして展開していく生真面目なサラリーマンのような兵士ルシウスの家庭でのごたごた、という内容。
そして2では亡きカエサルの後、その養子オクタヴィアヌスとマルクス・アントニウスを軸にしたのローマ帝国混乱期から帝政期への移行がテーマになっていて、またここでもローマの日常的茶飯としてルシウスやその親友プッロの周辺が描かれていくのですが・・・
とにかくずばーっと見終わって胸の中に澱となって残る言葉はまず「女って怖い」。
この定義がもうお星様の如くあちらこちらのシーンに散りばめられながら、シーズン2の全10エピソードは展開していくわけです。

いやあ、もう、ほんとになんていうか・・・
シーズン2に出てくる女たちのしたたかさ、強靭さ、粘り強さ、嫉妬深さ、恨み深さ、頭のよさ、我慢強さ、しなやかさたるや、もうこんな形容だけでは物足りないくらい壮絶極まるものがあります。
頑張って自分たちでいろんなことやりくりしているつもりになっている、帝国を仕切る男達の現実感の無さと、今ひとつぎこちない計算高さや感情に流される幼稚さが物凄く具体的に浮き彫りにされていて、感慨深いものがありました。
地球上に男と女が存在してから、そしてし続けていく以上、変わりようの無い普遍的性質なんだろうなあ~と画面を見つめながらつくづくと思ったわたくし。
登場人物の中では特に帝国初代皇帝アウグストの母であるアティア、そしてやはりクレオパトラの存在が抜きん出て印象的です。

クレオパトラなんてリズ・テイラーやら何やらによって今まで映像化されてきたのは一体なんだったの?ってくら、リアリティ溢れるセクシーさと強さとしなやかさと引き込み力で、なぜカエサルやマルクス・アントニウスのような出来物の男らがこの女性に溺れてしまったのか、充分に納得行く感じの仕上がりになってます。ほんと。
事実クレオパトラは絶世の美女だったというより、むしろこういう感じだったに違いないと私も思いますね・・・タコの吸盤のようにそこから醸されるフェロモン粒子が男の肌に吸い付いてくるような、そんな力の持ち主。
実際クレオパトラってのは在エジプトではあってもギリシャ人の両親から生まれてんだそうで、褐色ではなったのが事実だそうです。だったら尚更リアル。
それと、これは事実とは無関係だと思うのですが、クレオパトラに奪われたマルクス・アントニウスを愛し続けた鉄のように強い女、そして母でもあるアティアも、今回に及んではいろいろと揉まれて落ち込んだり泣いたり立ち直ったり葛藤したり忙しく、でもそんな中に女としてのかわいさすら醸しながら一生懸命に立ち上がっていく様がなかなか魅力的に思えました。

まさにマンマが権力を握る、現代のラテンの国々の原点ここにありき、って感じです。
ああ、でもこれでこのドラマの全てが終了してしまったわけで・・・
物凄い虚脱感に見舞われてます。
できればあと10シーズンくらいやって欲しかった(つまりまあ、ローマ時代崩壊まで)けど、なんせ制作費200億円ですからね。
確かに1に比べて2の方は最終駆け足でドタバタと畳み込むように話が展開していき、「そっか、お金が足りんのか・・・」と必然的に思わせられる次第。残念です。

でもほんとに良くできてますよ、これ。
古代ローマ初代皇帝であるアウグストゥスというのは、どんな書物を読んでも「ローマ帝国を正しい方向に導いた正義の味方」みたいな書き方されがちですが、ここではもう、「ちょっとお勉強しすぎたアブナい奴」くらいのイメージになってて、なんだか不思議でした。
でもめちゃくちゃに荒んでたローマ帝国をある意味集約できる力ってのは、ただの正義感でも出し切れないものかもしれませんから、そう考えると「まじでこんなだったかも」と思ってしまったりもします。
おまけにこのストーリーの中ではマゾだし。叩かれると盛り上がるというあからさまな性交場面がまた強烈。
ほんとにアブです。
ドラマでも小説でも漫画でも映画でも、やはり歴史物は飽きないエンターテイナー性も兼ねて演出されてるものが面白くていいですね。でもってそこに歴史的考証の忠実さも加わって高品質なものに出来上がってくれれば尚更最高。
そんなわけで、明日から・・・
何を糧に生きていこう・・・・
by dersuebeppi
| 2007-11-03 08:27