ファシズムと古代ローマ
2017年 05月 25日
私の秘蔵本の1冊なのですが、いろいろな意味であまりに凄いのでご紹介します。
イタリアの『DOMUS』という建築雑誌の別冊付録(大きさはB4-A3くらいでかなり大きい)ですが、刊行年が1935年。
この時代のイタリアはファシズム政権下です。
ファシズムの語源は「ファスケス」という斧の周りに木の棒を束ねたものですが、古代ローマ時代の護衛官はこれを担いで独裁官や執政官といった権力者の後ろを歩く習慣があったのだそうです。発祥はエトルリア時代とされています。
つまり「ファスケス」とは権力者の象徴。それがファシズムという名称の謂れです。
当時イタリアでは20世紀初頭から「フトゥリズム(未来派)」という前衛芸術が支持されていたこともあり、この時代の表現作品の多くはこのフトゥリズムの影響を多大に留めるものになっていますが、こちらの別冊付録も類に漏れず。しかも凄い完成度で、今の時代においてもこんなハイクオリティな付録の図録は見た事がありません。
私をイタリアに招聘したマルコ爺さんの遺品ですが、頂いてしまいました。
少しづつ小出しに中身をご覧にいれましょう。
表紙はトライアヌスの記念柱
中表紙
ハドやん(ハドリアヌス)
アンティノー見開き2P
ポンペイレッドが美しく再現されたカラーページ
エンディングとイタリア政府観光局ENITの宣伝
「この巻に掲載されている諸々の広告の制作は全てドムス出版によるものです」という記載があります。
そう、実はこの別冊付録には沢山の広告が掲載されているのですが、これがなんていうか、素晴らしいのです。
すべて、古代ローマの遺産と当時の技術による商品がテーマになっています。
例えばこんな感じ:「Fiat」と古代ローマのレリーフの二輪戦車
レンガ
バスルーム
チョコレート(Perugina) のお隣はクリスタルを用いた建築素材? 耐火性があるようです
家具
そしてあとは古代ローマと関係ありませんが
パネットーネ
で 車用オイル
ファシズムという思想はともかく
ぬかりの無さ感も含め、この別冊制作に携わったDOUMUS出版社には敬服いたします。
古代ローマ人も自らの文化がこのような完成度でアプローチのされるのであれば、いくらでも「よし!」と思うことでしょう。
by dersuebeppi
| 2017-05-25 15:07