「職業は漫画家です」はイタリアでは認められない、という話
2018年 05月 01日

イタリアに帰国する直前の夫婦漫画家ラウラ・イリョーリオ&ロベルト・リッチの2人と、寺田克也氏の個展が開催されている北青山のギャラリーで落ち合う。
この二人とは先日イタリア文化会館で県談をしたばかりだが、なかなかそこでは突っ込んだ話までできなかった。本人達もそう思っていたらしく、夜はイタリアという国において漫画が職業としてどれだけ認められにくいか、絵の仕事=趣味=お金なんていらない、絵で食べていこうという姿勢=間違い、という考えが定着して腹立つことばかりだ、という話しでめちゃくちゃ盛り上がる。溜まりまくっていたものを吐き出すのに言葉が途切れず、目の前のお好み焼きもろくに食べられなかった。要するに、このイタリア的漫画家の捉え方は、私のイタリア人家族(特に旦那と姑)の漫画に対する不理解の原点でもある。
ラウラ&ロベルト、そして私も大好きなイタリア人漫画家GIPIは、元々金持ちの家の出身だったので、お金と漫画を結びつけられずにずっと創作をしてきた人だったから、出版社が原稿料や印税を全く振り込んでいないことにも気がつかず、原画も二束三文で売られていたらしい。でも、最近結婚した女性がマネージャーをやるようになってから、今迄未納だったお金を出版社関係に全て支払わせ、お陰で彼女は「ハイエナ」とイタリア出版業界で呼ばれるようになったとか。
このお金に煩い妻のせいでGIPIはそれまで仲良しだった同業者IGORTとも険悪な仲になってしまったのだという。
絵を描くことが当然の職業と捉えられていたルネサンス時代に戻らないものだろうか…と途方もない方向に話しが進む。
どこもかしこもまったく漫画家には世知辛い世界。特にイタリアは漫画(BD)をひとつの文化と捉えているフランスと比較しても、出版社の待遇も含め、漫画家が育まれにくい土壌になっていることは確かなのである。
2人が昨年日本の国際漫画賞優秀賞を受賞した「闇の心」より↓
