奈良で考えるシリアについてのあれこれ
2017年 07月 13日
能舞台での県談だったのですが、我々のプログラムの終了後には大蔵流狂言師達による『棒縛(ぼうしばり)』の公演もありました。
海外からの参加者もうっとりしながら鑑賞。
翌日はロンドン在住のシリア人ジャーナリストから、前日のシンポジウムで私が語った日本における漫画のあり方、漫画という表現の持つ影響力についてのインタビューを急遽受けることになったのですが、「あなたは漫画というツールでシリア国内で起っている深刻で残酷な事態や政治情勢でさえも真実を表現することが可能だと思っているのか」「文字ではなく絵での展開は想像力を限定的なものにしてしまうのではないか」「今回のシンポジウムのように文化遺産に特化したテーマでなければ日本はシリアについて興味を持ってくれないのか」といった深い問いかけもありました。
私はジャーナリストではありませんし漫画そのものにも読者は報道としての役割を求めているわけではありません、でも我々のように想像力の駆使を許される表現者にこそ伝えられる真実のかたちもあるはずですと答えると、感慨深い表情で首肯いていました。このジャーナリストは日本へ向かう飛行機の中で、もうすっかり大人の日本男性がずっとiPadで漫画を読んでいるのを見て心底から驚いたのだそうです。漫画が彼にとって(彼と限らず多くのシリアの人にとって)未だ理解しきれない媒体であることが伺えました。
しかし、扮装で孤児になったり大きなトラウマを抱えた次世代の子供達を支える新しいツールとして注目されているのが漫画であること、将来漫画の力で彼らの精神を復興させシリアの元気と取り戻す事もできるのではないか、という話にまで発展。
最後に、ジャーナリストの故郷だというアレッポ北西部を訪れた時の写真を見せた時、それまで攻撃的な姿勢だった彼の目にうっすら涙が浮かんでいました。
素晴らしい国シリアに1日でも早く平和が戻ってきてほしいと願うばかりです。
そして本日はシリア移民の息子であるスティーブ・ジョブズ最終巻の発売日です
by dersuebeppi
| 2017-07-13 08:40