ルーヴル美術館特別展に展示されている私の作品「美術館のパルミラ」について
2016年 07月 21日
明日から六本木・森アーツギャラリーで開催される、ルーヴル美術館特別展「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」。
参加している日仏16名の作家のひとりとして私も作品を出展させて頂いておりますが、今回私が描いた作品にはセリフがありません。
その為か、メディア系の取材などでもこの作品の主旨についての説明を促される事が多いのですが、美術館を訪れて絵画や彫刻を見る時、人はその作品に対して具体的な説明を求める事はしません。
今回はルーブル美術館との拘わりも考慮して、あえて『言葉の無い絵画と接する様に読んでもらいたい漫画』を描いてみました。
開催前にイタリアへ帰ってしまった為、展示会場で全ての作家の方達の作品を見る事ができたわけではないのですが、会場の奥の方の壁に並べられた私の作品「美術館のパルミラ」は、何気にエンターテイメントからは逸れた、異質な雰囲気を放っているように思われました。
漫画というツールを用いて叶う幻想世界の描写に、古い新しい関係なく、歴史的な記録を投影させたくなってしまう私の嗜好はここにも反映されていますが、今回の作品に盛り込まれている“歴史的記録”は、如何せん新しく、生々しいものかもしれません。
様々なインタビューで今回のテーマになっているシリアを含む中東の問題やパルミラの遺跡についての質問をたくさん受けました。
パルミラが嘗てはユーラシア大陸の西と東を結ぶ重要な隊商都市であり、そこを交差する様々な国の人種によって齎された多様な宗教や文化が、軋轢を起こす事無く毅然と共存しあえた、今の地球の荒んだ有様からしてみれば考えられないほど進化した視点を持った世界だった、というのはこの漫画で伝えたかったことの1つです。
でも、この作品における最大のテーマは“ルーブル美術館”です。
美術館とは、ありとあらゆる時代の、様々なバックグラウンドを抱えた作品が時空を超えて、毅然と展示されている場所であり、凶暴性の消失した過去の時間と今を生きる人間が静かに向き合うことのできる、究極的にデモクラティックな場だと私は思っています。
開催は明日7月22日〜9月25日まで。
ローソンではこのような作家別のチケットも販売されているそうです。ルーブルに思いを託すフランスと日本の作家陣の作品を斬新にコーディネートされた展示会場でゆっくりご覧下さい
「ルーヴルNo.9 〜漫画、9番目の芸術〜」
by dersuebeppi
| 2016-07-21 16:11