水木しげるさんのパプアニューギニア

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何度読んでみても面白くて、すっかり手放せなくなってます。
水木しげる先生の「ラバウル戦記」。

今年もいろいろな本を読みましたが、これが面白さと驚き的には突き抜けて本年度の№1かもしれません。

とにかく水木先生のあの飄々とした世界感でラバウルという第二次世界大戦の南方の激戦地での生活を表現されると、戦争というイメージとはまた異質な、不思議な気分を醸されます。

パプアニューギニアという神秘的な未開地を、戦争というフィルターに通さず見つめながら過ごしている水木二等兵。
左手を失ったりマラリアに掛かったり逃げたり死にそうになったり、といった劇的な出来事を実に何の盛り付けもない文章で淡々と書き進めていくあたり、これが別な作家だったらこうはならないと思われます。ある意味大変勉強になります。

で、何に一番感動したかというと、水木二等兵はが現地除隊を申し出るほど、このラバウルのあるパプアニューギニアのニューブリテン島の原住民と心分かち合って溶け込んでしまったこと。
彼はこの原住民のことを「土と暮らす立派な人々」という意味を込めて「土人」と呼んでいますが、この「土人」との接触を禁止されつつも結局いつも掟を破って部落へ出向いてしまうほど彼らの世界と人柄に惹きつけられていたようです。
そしてこの変わり者の日本兵を現地の人も「パオロ」と呼んで、とても温かく受け入れてくれていたようです。「パオロ」用の畑まで用意しててくれたというから、本当に好かれていたのでしょう。
一人で原住民に混じって踊りなんかも見たりしてたそうです。

表では容赦ない戦争の火花が飛び交っている中で、水木二等兵の、現実や既成概念に捕われない寛容な振る舞い方や、現地の人やこの土地に対する大らかな気持ちのあり方は、誰にでも真似できることではありません。

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ここで水木先生がお描きになられている踊りはニューブリテン島の「トゥブアン」という精霊です。パプアニューギニアにはこうした仮面や装飾によって表現されるたくさんの精霊がおりますが、この「トゥブアン」は特に霊力が強いものなんだそうです。

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こういうのを見ていると、水木先生の描く妖怪モノの要素が実はこのラバウルでも、更にどっさり吸収されていたのではないか、という憶測も否めません。

飄々と、時には面白可笑しく、悲惨な事象も感情に揺すぶられることなく、自らの苦労に酔いしれる事もなく、客観的でクールに表現されるそのワザは、漫画家になった私にとって一番見習いたい部分かもしれません。

水木しげるという人が漫画家になる道を選んでくれて、本当に良かった……
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by dersuebeppi | 2008-11-30 18:43

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