シカゴ抑留における考え事

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今温度計見たら-19度。
ミシガン湖の凍った表面から湯気が立ち上っています。
こういう気候の中で暮らすと逆に仕事が捗ります。
仕事してないと、生き延びられないような、そんな気持ちになるわけです。

やはり南国に行くたびに思うのは、あの人たちはこの様な恐ろしい気候帯に暮らさねば発生しない、「死ぬんじゃなかろうか」という切迫感などには滅多に煽られないので、のんびりしてしまうのでしょうね。
キューバが敢えて社会主義の道を選択した直後、実態を調べに現地入りしたフランス人の調査書には「あんなすごい革命したくせいに、みんな仕事する気ゼロ」みたいなことが書かれてしまったわけですが、仕方ないですよ、それは。

ところでうちの夫はイタリア人でありつつもかなり勤勉野郎だと思うのですが、私の仕事に対しては理解の壁をどうしても乗り越えられません。
テルマエとかが騒ぎになる前、まだ忙しくない時期までは良かったのですが、今みたいに毎日只管休む間もなく18時間原稿漬けの私を見ていると許せなくなるようです。

「どうなってるんだ、ニッポンのマンガ業界ってのは!? まるで発展途上国の炭鉱の労働者みたいじゃないか!! 労働組合とか無いのか!?! 絶対おかしいよ!!」

…そんなこと私だって何度となく考えましたよ…ええ。でもね、労働組合があったとしても関与した時点でみんな失業ですよ。
最近イタリアで話題になっているフィアット社の労働条件切り下げも酷い話だとは思いますが、あれと同じですわ、日本のマンガ業界ってのは。

ブラジルへ行ってもブラジル人達から一斉に袋叩きにあいました。
「オマエの働き方はどうかしている!! 現代にあるまじき労働時間じゃないか!!」
「ほらみろ、みんなこう言っているじゃないか、やっぱりおかしいんだよ!!」
と旦那まで嬉しそうに便乗してくるし。
「あんまり働きすぎて息子を辛い目に会わせないで」と姑から電話は来るし。
「でも好きだからいいんだよ、マンガの仕事は!!」と答えても、不可抗力です。

イタリアもブラジルも日本みたいに出版業界が経済とそんなに強く結び付いているわけじゃないですからね・・・わかんないんですよ。
ちなみにブラジルの売れてる作家の人だって初版部数は三千とか五千だって言います。
イタリアもそうです。
日本とぜんっぜん違うんですよ、ストラクチャーが。

とにかく!
ラテンの人間に最も理解され難い職業ランキングのトップはおそらく「忙しい漫画家」であろうとわたくし、痛感いたしました。

まあマンガなんざ浮世の人気商売ですからね・・・
今の忙しさなんてあくまで期間限定だと思ってますんで、いづれはまた旅行したり思索したりする時間が確保できる生活に戻れるだろうとは思っております。

でもその前に、もしも忙しい労働時間が理由で家族崩壊の危機になったら、その時はやはり家族優先順位の判断を取らせていただくしかないですね。
そしてさっさと温かい国に移って庭に生えてるバナナでももぎって喰って生活させてもらいますわ・・・
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by dersuebeppi | 2011-01-21 23:32

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